雨漏りを止める!笑顔を守る雨仕舞い論

火災保険で屋根を直す時に知っておいた方が良いこと

昨今の屋根が捲れあがる様な大型化した自然災害のニュースなどで屋根の修理に火災保険が適用されることが認知されてきましたが火災保険で屋根を直す時に知っておいた方が良いことがありますので、今回は吉沢板金が最近行った火災保険を使った修理の中でも屋根の被害に最も多い風災被害が適用された例を元にご紹介したいと思います。

火災保険(風災)は最大瞬間風速が20m以上ならほぼ認められる

風災被害で瓦が落下
こちらが今回風災害にあった箇所です。屋根瓦(セメント瓦)が落下し同時に軒裏に雨染みが確認できます。

風災害で雨漏り
地面には落ちた瓦がそのままになっています。

風災とは台風・豪雨・竜巻・突風(春一番)などで建物に被害が出ることですが、過去の例でみると最大瞬間風速が20m以上の場合で認められないケースは殆どありません
※日にちを間違えて申告してしまうことを避けるために自分の記憶している日の最大風速を気象庁のホームページで確認してみてください。

屋根工事の専門店に調査(見積り)を依頼する

専門店(直接施工店)なら中間マージンがないため安くなり、保険会社の対応も早くスムースになります。アジャスター(保険鑑定会社)による調査が入らないで保険金が支払われることも多いです。

直接施工店以外というのは例えばハウスメーカーや工務店、塗装屋さん等の畑違いの業者、そして今ちょっとした問題になっている一部の火災保険申請代行会社です。
彼らは『実際には工事を行わない自分たちにお金を残さなければならない』ので保険会社に出す見積りも市場価格よりかなり高額だったりします。

すると、保険鑑定会社による調査が行われたり不要に怪しまれたりするせいで保険金の支払いが遅れるばかりか却下されることもあります。

当然、肝心の工事もなるべくお金をかけたくない(実際に工事する人に支払う額を少なくして自分たちにお金を残さなければならない)ので原状復帰プラスアルファ位のものを想定しておいた方が良いと思います。

※本文中に”一部の火災保険申請代行会社”と書いた通り全ての代行業者が問題だという訳ではありません。
30%~50%を超えるような手数料を請求したとしてもこれ自体は実は違法ではありません。(本来自分ですれば無料のものに50%はさすがに高いとは思いますが・・・。)

消費者庁は、消費者が本来必要のない契約を締結させられたり、迷惑な方法による勧誘行為や無料という虚偽の言葉を用いての勧誘活動、クーリング・オフを妨害されたりするなどの災害に便乗した悪質商法(詐欺)を違法行為として警鐘を鳴らしています。

二次的損害に気を付けよう

火災保険は二次的損害は補償対象外
火災保険では基本的に二次的損害は補償対象外です。

被災後に放置していたことで躯体や柱に腐朽が及んだり屋内の天井などに雨漏りのシミやカビが及んだとしてもそれについては保険金が支払われません。

ブルーシートなどで適切な応急処置をしてもらいましょう。

多くの場合応急処置の費用は火災保険で補償してもらえます

二次的損害は補償してもらえない火災保険ですが、被害を広げないために必要な適切な応急処置にかかる費用(仮修理費用)は支払ってもらえます。

他にも割れた瓦や剥がれたトタン屋根などそのままにしておいては危険な残存物を屋根の修理業者に回収してもらったり清掃してもらったりする費用(残存物片付け費用)や、屋根修理会社が行う現地調査や見積作成にかかる費用(損害範囲確定費用)などが補償してもらえることが多いです。※保険会社や保険商品によっては補償されないこともあります。

吉沢板金の場合、見積り自体は無料ですがお客様ご自身で損害範囲の申告や写真撮影が難しい場合に見積書と一緒に保険会社に提出できる『損害範囲確定報告書』の作成をサポートさせていただいていますが、その費用が上記の損害範囲確定費用で補填してもらえます。

火災保険の申請が認められない条件があります

  • 経年劣化
    長年メンテナンスをしていないなどの理由で見るからに見た目の劣化の進んだ屋根や壁は経年劣化とみなされ自己負担となることがあります。
  • 修理費用(損害額)が20万円未満※
    意外と勘違いしている人がいるのですがこれは免責金額のことではありません。(20万円は自己負担という意味ではないので注意してください。)

    20万円以上であれば支払いの対象になりますが(認められた分の支払いでもちろん見積満額という意味ではありませんが)、20万円に満たなければ1円も支払われないということです。

    ただし、屋根を修理するためには仮設足場の設置が必要な場合が多く足場の設置を含めた総額は20万円以上になります。

    逆にこの点を知らない業者さんが良かれと思ってかもしれませんが足場を設置しない危険な工事で15万円でやってくれたとします。この場合満額が自己負担となってしまいます。

  • ※一定額以上補償型(フランチャイズ方式)の場合の一例です。免責(エクセス)方式や実損型等で異なりますのでご契約の内容を確認してください。

  • 材料のグレードアップや屋根カバー工法
    火災保険でできることは「原状回復」までという考え方があります。

    同じ材料で被害を受けた前の状態に戻すのは可能ですが良いグレードの材料で直すことや棟板金が飛ばされたような時に真夏に部屋が涼しくなる「換気棟」にグレードアップすることはできません。

    同じ理由でスレート瓦(コロニアルなど)が剥がれた時認められるのはスレート瓦での部分修理で、金属屋根へのカバー工法などは認められません。
    ※被害が広範囲に及んでいてその面全部を剥がしてスレート瓦に葺き直すよりカバー工法の方が安くなる場合などで認められたケースはあります。

  • 地震によるもの
    建物の破損の理由が地震の場合には地震保険の対象となり火災保険は補償対象外となります。
  • 工事初期不良
    自然災害でなく人為的ミスである工事初期不良は火災保険の補償対象外です。10年以内に気づくことが出来たなら建てた会社に直してもらいましょう。

支払われた保険金の使い方は自由である

そしてここからがポイント。

火災保険で認められるのは原状回復にかかる費用のみですが、全くその通りのことをする必要はないんです。

支払われた保険金の使い方は保険契約者に委ねられているためそれを元手に原状回復以上のことをしても良いということです。(例えばカバー工法の見積では保険は通らないですが修理見積で認められた保険金をカバー工法の費用の一部に充てることができます。)

自分で選んだ屋根修理業者に品質の良い工事をしてもらおう

瓦を外したところ
上は下地を直すために瓦を一時外した状態です。よく見ると瓦桟(瓦を引っ掛ける桟木)に傷んだ部分があることが分かると思います。

瓦下に捨て板金設置
木下地を交換し、既存の防水紙の下には今回施工した新しい防水紙が二重に隠れていますが、ここでは前の写真(ビフォー)にはなかった白い板金に注目してください。

以前はケミカル面戸で水の侵入を防ぐ仕様だったところ、後の写真(アフター)では乗り越えてしまっても捨て板金で受けて流す『より高品質な仕様に改良してある』という重要なポイントになります。

これは原状回復に留まっていては経年変化で瓦桟や野地が腐朽していってしまうと判断したためです。

さあ、もうお分かりですね?
経年変化で破損が起きてしまっても火災保険では補償されないということが。

これがもし工事自体をなるべく簡素にして自分たちにお金を残したい業者が介入していたらどうなるか想像に難くないのではないでしょうか?

台風で屋根瓦が落ちたら他の同じ部分も危ないと思うべき

屋根の納まりというのは同じ人がやっていれば大抵同じものです。
そしてまたそれなりの築年数が経っていれば他も似たような状態ですので、今回たまたまこの部分が落下したというだけで同様の他の部分も危ないと思った方が良いです。

破損した屋根や瓦が隣家や車、人を傷つけても火災保険では補償されない

これは自然災害のような不可抗力の事故ではそもそも賠償責任が発生しないという原理があるため(建物の管理上、重大な過失があった場合は賠償責任が発生しますが火災保険ではなく個人賠償責任保険が担保します。)ですが、これを知って「良かった」と思う日本人が果たしてどれだけいるでしょうか?

殆どの人は逆に恐怖を覚えるはずです。自分の家から飛ばされた屋根でお隣さんが怪我をしてしまったのに黙っていられる図太い神経は私にはないですね。

よく問題になっている『実質0円で直ります』はやはり気を付けなければならない

見積だけ高くして安い工事を提供し、自社にお金を残すビジネスモデルには高い品質の工事を提供するという一番大事なことが欠けています。

次の台風で今度は反対側の瓦が落ちて隣人に怪我をさせてしまう心配をしなければならないかもしれません。

ここまで読んでいただいた方には保険金で出来る原状回復に拘らず、費用を足してでも品質の良い工事を選択した方が賢いということがお分かりいただけたのではないかと思います。

屋根の専門家だから気づける問題がある


これは実は最初に調査に伺った際に気が付いて動画を撮ってお客様に確認して頂いたものです。
棟瓦がカタカタと音を立てて動いてしまっているのがお分かりいただけると思います。

これは所謂初期施工不良で火災保険では補償されないものですが、このままにして置いたら大変危険なものでした。

棟瓦の下地施工不良
開けてびっくり・・・・棟瓦の下地垂木が漆喰に乗っているだけで固定されていません。

屋根修理の様子
棟下地を固定するために一時解体中の棟瓦(丸棟)。向かって右側が今回の風災で被害を受けた場所です。

この問題に屋根の専門家以外で気が付くことが出来る人がいるでしょうか?

丸棟の修理
下地垂木をしっかりビス固定し・・・・

丸瓦のビスも長いものに変更
丸瓦を元に戻すのですが、元々のビスが短かく効いていないところがあったのでこれも長いものに変更しました。(写真左が新しいもの)

この時点でもう棟瓦がカタカタと動くことなんてありません。もちろんこれが正しい姿です。
漆喰の補修
痩せた漆喰もこの際同時に補修します。

火災保険で掛けた足場で効率良くリフォームできる

賢い人は気づいたかもしれません。
今回の全ての工事に必要な仮設足場は火災保険で修理のために掛けた足場です。

今回棟瓦を直さなかったとしましょう。(そもそも一見関係ない場所なので気づかないかもしれませんが。)
次の台風で棟瓦が飛ばされたとします。また火災保険で直せば良いかと進めたところ、保険鑑定会社に工事初期不良だったことが見破られると今度は足場から何から全て実費になってしまうのです。

軒裏天井の塗装
火災保険では破風の部分と角の部分しか保証されませんでしたがこの足場を利用してこの面全部の再塗装が出来ました。
見た目はさることながら後で残した部分だけを塗装したとしたら大変もったいない出費となっていたでしょう。

品質の高い工事
この記事に目を通してくださった皆さんにはこのアフターの姿がただの原状回復とは全く違う高品質なものであることが分かって頂けることと思います。

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